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スロープリントとは?

「Slow Print」

スローで手間隙かかるけど、「趣き」とか「風合い」が表現でき、「想い」をより強く届けることのできる印刷手法或いは印刷物・加工物を総じてSlowPrintと呼びたいと思います。

効率と生産性の高いオフセット印刷、オンディマンド印刷(トナー・インクジェット)だけではなく、クライアントの想いを正確に表現すべく材料、紙、加工方法、又はそれらの組み合わせを選択、コーディネートし、創造性豊かな、よりクラフト性の高い印刷物の生産を広げる運動と捉えて頂ければ幸いです。

スロープリントは、15年程前から言われ出した「スローライフ」や「スローフード」の「スロー」をコンセプトとして引用しております。

時代背景

21世紀を迎えてから15年が過ぎました。NYの9.11事件が2001年で、あれから14年、世界は変ったのでしょうか?
ちょうど20世紀から21世紀に移行する、そのころから「スローライフ」とか「スローフード」と言う言葉が日本でも聞こえ始めました。
がむしゃらに突き進むことだけを良しとする20世紀的な世界から、立ち止まって考えることも良しとする世の中への移行すべきという発想です。言い換えれば「効率」や「生産性」を最重視し経済的豊かさのみを追求するのではなく、本当の豊かさを感じられる世の中に変えようと言うムーブメントなのです。

私達は未来に対する明確なビジョンとか価値を、未だ見出だせずいるのではないでしょうか。それどころか、私達が面する問題はより複雑化し「先行き不透明」とか「閉塞感」が深みを増し、私達は漠然とした強い不安の中で暮らしているように思えます。

ちょうど今から100年ほど前、19世紀から20世紀への変わり目にウィリアムモリスのアートアンドクラフツ運動が生まれ、日本では柳宗悦が民藝運動を立ち上げました。そしてそれらが世界的な「モダニズム」の運動に繋がって行ったのです。産業革命により激変する社会情勢と日々の生活から、新たな価値、理想の暮らしを見つけるために当時のクリエイター達は必死に考え行動したのです。
現代は第二の産業革命と呼ばれ、ブログ、SNS、電子書籍に代表されるデジタル・通信革命の時代です。情報の質と量、そしてコミュニケーションの形が激変しています。100年前と非常に良く似ていますね。世紀の変わり目とは、そういうものなのでしょうか。
私達も未来に繋げるために、何かしなければならない、そう強く思うのです。

印刷とは何なのか?印刷物とはどういう働きがあるのか?個人にとって印刷とは?紙に印刷する意味とは?社会にとっての役割とは?デザインと印刷との関係とは?文字情報とは?グラフィックと紙による表現とは?グーテンベルクが活版印刷機を開発してから約550年、印刷とはどのような役割を果たしてきたのか?そして、現代ではどのような役割が果たせるのか?
私は「スローライフ」の根底に流れるコンセプトに、様々な問題に対するソルーションが隠れているような気がするのです。

これは、NPO団体スローライフジャパンのWEBPAGEからの引用です。
『結果だけでなく過程を楽しむ。地域の自然・歴史・伝統・文化を大切にして暮らす。感性を磨き、みずみずしい人間関係を取り戻す。
こうした価値観の変化は、新しい暮らし方をつくりあげるでしょう。「スローライフ」を単なるライフスタイルのレベルにとどめず、まちづくりへの目標と手法に活かしたい。地方分権や、その上に成り立つ新しい市町村経営の改革へと進めたい。緩急自在の意識を育て、地域の活性化の新しい道を見出したい――。
私たちは市民と一緒にスローライフを考え、自治体と協力してスローライフが実現できるまちづくりを進め、手間暇かけて魅力ある地域をつくりだす運動を進めます』

印刷の原点とは、このような社会の様々なレベルでただ情報を伝達するという事だけではなく「想い」「熱意」「趣向」を伝える・表現する方法であると思うのです。新たな文化や創造の始まりに印刷があるのです。

SNSやtwitterブログなどデジタルコンテンツでは表現し得ないモノとしての価値を創造する事なのです。
その中でも、スローでローテクだけど素敵な印刷手法は、印刷を面白く魅力的なモノにするすごく有効な手段なのです。
単なる懐古主義ではりませんし、デジタルを否定するものでもありません。
デジタル時代の今だからこそ、創造力の広がりとして「特殊印刷」がより輝きを増すのです。

ゆっくりだけど、暖かい
ゆっくりだけど、美しい
ゆっくりだけど、面白い
ゆっくりだけど、楽しい
ゆっくりだけど、奥が深い
ゆっくりだけど、懐かしい
ゆっくりだから、カッコいい

こんな、印刷物が増えれば、何かが変る気がしませんか?

ー日本の創造性ー

そしてもう1つ「スロープリント」のコンセプトの中に込めたい想いがあります。
それは、日本の美意識と創造性の再確認と継続です。日本はもともと超「スロー」な文化を創ってきたのです。
四季のうつろいを愛で、花鳥風月に遊び、ありのままの自然を暮らしの中に取り入れ、生きて行く方法を文化として完成させていたのです。建築、民藝道具など「モノづくり」においても、様々な意匠をほどこし、世界に誇れるモノ、技術的・美的に非常にハイクオリティーなモノを無数に創出してきたのです。

しかし、特に伝統工芸分野において顕著なのですが、現代の私達はその日本の創造性多くを失いかけているように思えるのです。
そこで、スローでローテクだけど素敵な印刷の過程で、日本の創造性が復活、再生しえるのではないか、日本的美意識と創造性の遺伝子を引き継いでいけるのではないか、とも考えております。

ビジョン

世界の印刷業界は今、「エコ」と「デジタル」に進んでいます。
欧米ではすでに、「エコ」と「デジタル」が当たり前であり、メインストリームとしての地位を築いています。
「スロープリント」はその「エコ」の部分をより深く掘り下げ、ライフスタイルや価値観の領域に働きかける運動としての役割を果たしていけるのではないかと考えております。

「スローライフ」の考えを広げる一つの種となり、未来につながる新しい価値、新しいライフスタイルを創造する起爆剤となる事を夢見ているのです。それは新たなるアーツアンドクラフト運動であり「モダニズム」の理念の継承でありそして、世界の大切な価値を共有する人々とつながる、『グローバリズム』ではなく『インターナショナル』な試みなのです。ましてや、日本においては新たな「文芸復興」や「国学」に繋がればと夢が広がるのです。

最後に、岡倉天心「茶の本」の中の言葉を引用しまとめさせてください。

『われわれは生活の中の美を破壊することですべてを破壊する。
誰か大魔術師が社会 の幹から堂々とした琴をつくる必要がある。』

1人や1社だけでは大魔術師にはなれないまでも、1つの歯車になり大きな動きの小さな種になる事から始めたいと思っております。
今後とも、よろしくお願い申し上げます。

平和機械株式会社
代表取締役 桝 隆司